シーソーが揺れてる
「アップルパイはありがたく貰いますけど、これはお返しします」
そう言って良太はその紙切れを丁寧に折り畳むと直人の手に乗せた。
「いらねえよこんなもん」
「もう先輩、そういうすぐばれるような嘘つくの辞めてくださいよー」
「いやそれは・・・」
「何だ直人だめじゃないか」
二人のやり取りを聞いていたのか、親父さんが横から口を挟んだ。
「げっ、親父・・・」
「人を騙すとはどういうことだ」
「・・・ごめんなさい」
同様しつつも直人は親父さんに頭を下げて小声で謝った。

それから少しして朝礼が始まった。
「西山のやつ、レシートちゃんと抜いとけよ」
店長でもある親父さんの出張話を聞きながら、直人は心の中でぶつぶつ文句を呟いた。
一方の良太も、
「西山さんが買ってきてくれたアップルパイかー。きっとものすごく美味しいんだろうなあ・・・」
と妄想を広げていた。
この時ぐらいからだろうか。良太の中でとある決意が固まり始めたのは・・・。
そんな二人には全く気づかぬ様子で親父さんの話はしばらくの間続いた。
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