シーソーが揺れてる
続いて3件めもサイトからのメルマガだった。何も無かったかのように次のメールに画面を切り替えた。
「あっ、・・・?」
差出人の名前を見た春香は、心臓がぎゅっとなるのを感じた。
それは久しぶりに見た名前だった。ひょっとしたら忘れかけていたかもしれない。
「西山小夜子」
母の名前だ。
「お母さん?」
春香は少し躊躇ったが、意を決したように本文を読み始めた。
「あんた今どこに居るの?」と書いてあった。
「・・・」
画面を開いたまま春香はその場に立ち尽くしていた。そうだった!すっかり忘れていた。
母小夜子は音大を辞めたことも、心療内科に通院していることも、広美の部屋に居候させてもらっていることも知らないのだ。それらは全て内緒にしているから。
それとお正月以来1度も実家には帰っていない。そのことを、春香は改めて思い出した。
「うーん・・・」
春香は首を捻った。だがこれと言っていい言葉が浮かんで来ない。しかしずっとここで突っ立って居るわけにもいかない。
とりあえず春香は携帯の画面をメール返信画面に切り替えた。そしてこう送った。
「合唱部の練習が終わって今から寮に帰るとこ」と。
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