シーソーが揺れてる
スーパーの駐車場に入ると、ようやく春香は携帯を取り出した。
「あれ・・・?」
画面を見た春香は目を丸くした。さきほどのバイブはメールではなく電話だったようだ。しかもかけてきた人は母だった。
「あー?何だよもう」
苛立ちを隠しきれずに春香は叩きつけるように携帯を閉じた。



「えー何で出てあげないのー?かわいそうに」
夕食を食べながら母から連絡があったことを話す春香に広美は不満そうに言う。
「だって、何て答えればいいか分からないから」
「もういい加減本当のこと話したら?」
「えーっ?」
いまいち納得のいかない様子の春香に向けて広美は静かに訴えかける。
「いつかは話さなきゃいけないことなんだよ」
「うーん、それは分かってるけど・・・」
広美が箸を置く音に混じってつけてあるテレビから人々がどっと笑う声が春香の耳に入った。ちらっと画面の方を振り返ると、どうやら若手の芸人さんが何かしらのギャグを言ったことによる笑いらしかった。
「春ちゃん」
自分を呼ぶ広美の声で春香は視線をテーブルに戻した。
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