シーソーが揺れてる
「へえそうなんだー。あいつもちゃんとまじめに仕事やってるのねえ」
そう言って春香は良太の右側に座った。
「僕から見ても、杉浦先輩はとても仕事熱心だと思います」
「そうねえ。それがあいつの夢だったからねえ」
雲一つ無い空を見ながら春香はしみじみと言った。
「もしかして、先輩は子供のころから店を次ぎたいって思ってたんですか?」
「うんたぶんそうだと思うよ。小学校の卒業文集にはそう書いてたから」
「なんかそれってかっこいいですね」
良太の言葉はお世辞ではなく本心から出た物だった。
それは春香にもよく分かった。良太の顔を覗き込むと、その言葉通りのことを二つの目が言っているように見えたからだ。
「西山さんも」
「えっ、私も?」
春香は再び良太の目を見つめた。それはやはりさきほどと同じだった。嘘ではないようだ。
「はい。先輩も西山さんも、自分のやりたいことに向かって、ただ日田すら真っ直ぐに突き進んでいるじゃないですか」
「直人はそうかもしれないけど、私はもう・・・」
「そんな落ち込まないでくださいよ」
良太の強い眼差しが、春香の左頬に刺さるのが分かった。
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