シーソーが揺れてる
「だって西山さんは夢を挫折した今でも、自分を信じて生きているように僕には見えるんです。そんな西山さんが、僕の憧れなんです」
「えっ、・・・」
良太の言葉に、恥ずかしさと戸惑いと驚きが混じり合った名付けようの無い気持ちがこみ上げて、春香はどうすればいいのか分からなくなった。それは良太も同じだった。
自分の口からまさかこんなにも素直で真っ直ぐな言葉が出てくるとは、と言う驚きと、言ってしまった、と言う恥ずかしさと戸惑いが一気に溢れ出してきた。
「でも、片山くんだって今の大学に通っているのも、車屋でバイトしてるのも、自分が選んだことなんでしょう?」
沈黙を裂くように春香は尋ねた。
「いえ、大学もバイトも何となくです。大学は自分の学力でも入れそうなところをとりあえず受験したら受かっただけだし、バイトもたまたま手に取ったアルバイトニュースを見て部屋から近かったから始めただけですよ」
「ふーんそうなんだー」
「だからさきほども言ったように、夢を持っている杉浦先輩や西山さんが羨ましいぐらいです」
良太は言い終えた瞬間、ちょっと言いすぎたかなあ、と自分の言葉の鋭さを恥じた。
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