シーソーが揺れてる
「だいじょうぶ?疲れた?」
少し速度を落としていくシーソーの上で、険相に耽る良太を気遣うように春香は聞いた。
「すみません、先に失礼してもいいですか?」
「えっ?」
「仕事中の先輩を残していくわけにはいかないので・・・。僕も手伝わないとまた店長に・・・」
特に大きな失敗をしたわけではないが、良太は先日親父さんから説教を受けた。そこでの親父さんの言葉は、良太に取って心が痛い物だった。
もちろんそうとは知らない春香だったが、突然口ごもる良太に何となく悪い予感を覚えた。
「分かった。気をつけて帰ってね」
「はい、ありがとうございます」
「私もこの後実家に帰るんだ」
「あっ、そうなんですか。お盆を前に早めに帰省するんですか?」
「うーんそうじゃないの。じつは昨日親から電話があって、地元に居るなら帰って来いって言われたから。でもまたすぐ居候先に戻るつもり。今日は夏服を取りに行く次いでって感じ」
話終えると春香はシーソーから降りてベンチへと向かった。良太も急いでその後に続いた。
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