シーソーが揺れてる
それらを聞き終えた母から命じられたのが、
「1度帰って来なさい」
と言うことだった。
そんなわけで、春香は仕方なく実家までの道を歩いた。と言ってもバス停から家までは1分ぐらいの距離なのであっと言う間に着いてしまった。
家の門を潜ると、相変わらず庭にはいまいち名前の分からない草花が所狭しと植わっていた。庭いじりが趣味の祖父の仕業だろう。
春香がまだ音大に通っていた昨年の冬に祖父は無くなった。それは丁度後期試験のまっただ中だった。
祖父は秋ぐらいから体調を崩し入院していた。後期試験が始まる直前に容体が急変。春香は1時帰省するも試験が迫っていることもあって祖父の顔を少し見ただけですぐ大学に戻ってしまった。
そして実技試験の当日、祖父は帰らぬ人となった。
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