シーソーが揺れてる
「そんな話、一言も聞いてないけど。ただ・・・」
はっとして春香は口を閉じた。
「ただ、何だよ」
「いや、何でもない」
「あー分かった。あいつついに言ったんだなあ?そっかー」
受話器の向こうで考え深げではあるが、どこかおもしろそうに言う直人の声が聞こえた。
「何よ一人で」
不満そうに言う春香だったが、直人の言っていることには薄薄感づいていた。
「うーんこっちのこと」
その声のトーンから茶目っ気たっぷりに笑う直人の姿が想像できる。
「あっそう。てかそれより片山くんがお店辞めるかもしれないってどう言うこと?」
問いかける春香の声は、自分でも驚くほど尖っていた。
「まだそうとは決まってないけど?」
少し間を置いてから、直人は語り始めた。
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