シーソーが揺れてる
春香が音楽を挫折した理由ー簡単に言うと「理想と現実のギャップ」だろうか。
春香はポップスやCM音楽や映画音楽を作る音楽家になりたいと思っていた。そこで音大に入ればそのような音楽の作曲技法を学べるのではないかと考え、当時の担任でもあった音楽の先生の勧める音大を受験し合格したのだ。
しかしいざ入ってみると、ピアノや歌や作曲の実技では、楽譜や先生の指示に従わなければならなかった。何かを押しつけられたり、型に填められたりするのが嫌いな春香に取ってそれはとても苦痛だった。
さらに実技以外の授業では、あまり興味の無いクラシックや民族音楽などの西洋音楽史や、三味線や箏曲と言った日本音楽史を覚えさせられたり、楽典や音楽用語も全く頭に入らない。
そして課題は毎日暗号のような楽譜を解読することの繰り返しだ。
そんな日々に嫌気が指したのだ。
このままでは大好きなはずの音楽が嫌いになってしまうのでは。春香はそれが1番怖かった。
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