シーソーが揺れてる

火曜日の正午過ぎの公園。
直人はいつものベンチに座りイヤフォンでラジオを聞いていた。ポケットに入るぐらい小さなラジオは、昨日良太に貰った物だ。
「これ僕が外出中暇な時テレビを見るのに使ってたやつなんですけど、チレジかされて新しいのを買っていらなくなったんです。ちょっと古いですけど先輩よかったらどうですか?」
「えーいいのか?」
「はい。先輩前にラジオが欲しいって言ってませんでしたっけ。よくラジオ聞かれるんですか?」
「よくっても車の中で聞くぐらいだけどな。それで話の途中で目的地に着いちゃってあの話最後まで聞きたかったなあって思うんだよ」
「それならこのラジオは重宝しますよ。これ一つで移動先でも家の中でもテレビやラジオが聞けますから」
「おいテレフォンショッピングの人みたいなこと言うなよ」
そんな昨日の良太との会話を思い出しながら、直人は日差しを背中に浴びてラジオから流れるニュースを聞いていた。
「中国も北朝鮮も、よく分かんねえなあ」
公園中の木に群がり泣いているアブラゼミや熊ゼミの声に混じって直人は呟いた。
「そうだよねえ」
「えーっ?」
すぐ真横から聞こえた声に、直人は大きく目を見開いた。
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