シーソーが揺れてる
「何それ?」
春香は仕方なく本から目を上げると直人の手をじっと見つめた。
「合唱ってこれか?」
「・・・そんなわけないでしょう」
どうせそんなことだろうと思った。直人が言いそうなことぐらい大体予測できる。その内お互いに思ってることもシンクロしちゃうのかも?春香はそれが嬉しくもあり怖くもあった。
「ちぇっ、笑ってくれなかった。つまんねえの」
両手を解くと直人は口を尖らせた。
「あんたの言いそうなことぐらい分かるわよ。もう何年のつきあいになるのよ」
「じゃあこの後おれ何て言おうとしてるか分かる?」
一瞬春香は下を向くと、頬を緩めて小さく鼻を鳴らした。そしてこう言った。
「昔のことは忘れたよ、でしょう?」
「うん」
直人はすぐに頷いた。
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