シーソーが揺れてる

「そうだよねえ」
「おまえもか？」
「うん」
その時会場から「間もなく第２部が始まりますのでロビーに居る方はご着席ください」と言うアナウンスが流れた。春香は慌ててステージの方を振り返った。二人の後ろでは親父さんが山本さんと話に花を咲かせていた。
「春ちゃん、春ちゃん」
振り返った春香の耳元で声がした。
「広美・・・」
「こんなところに居た。今から反省会やるからってみんな探してたよ」
「あー、ごめん。直人が見に来てたからさあ」
そう言って春香は直人を見た。
「あっ、こんにちは」
広美は直人に笑いかけた。
「あー、どうも」
「今日は来てくれてありがとう。どうでした？」
「すごくよかったです。最初は静かで優しいんだけど、曲が進むに連れてだんだん力強くなっていくところが・・・みんな小田和正の曲の特徴を掴んでいるなあと思いました」
「まあそんな・・・」
「それお父さんと同じこと言ってんじゃん」
直人の感想に感心している様子の広美をよそに春香は低く冷ややかな声で直人に言った。
「いいじゃないかそんなこと」
春香と直人のやり取りに、広美はほっと安心したように微笑んだ。