シーソーが揺れてる
「おいあれ乗ろうぜ」
ふと、春香の頭につい何週間か前の公園での直人の姿が浮かんだ。
「あっあー・・・!」
と子供のようにはしゃいで滑り台を降りていく直人。
「鯨雲・・・」
滑り台の階段の上から二人で見た空。
「おれ忘れてたよ。シーソーって一人じゃ漕げないってこと・・・」
「あーあと10円両替しないと無い。春ちゃん持ってる?」
財布を手に慌てふためいている広美の声で春香の回想は途切れた。
「えー?10円?ちょっと待って」
春香はバッグから財布を出すと、そこから10円玉を1枚見つけると広美に渡した。
「ありがとう。助かったよー」
広美がそれをポケットにしまうのを見ると、春香は回想に戻った。
するとこんどは良太と向かい合ってシーソーに乗る光景が出てきた。
「西山さんは夢を挫折した今でも、自分を信じて生きているように僕には見えるんです。そんな西山さんが僕の憧れなんです」
「まあいいんじゃない?夢を探すことを今の夢にしておけば」
そんなやりとりがプレイバックされた瞬間、春香の胸の中で何かがぱんと音をたてて弾け飛んだ。
そっかー!良太は夢を探しに行ったのかもしれない。
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