シーソーが揺れてる
自分と言う存在を守ってくれていた物、自分が大切に思っている物を自分の手で投げ打って・・・。それは今の自分とよく似ているなあと春香は思った。
そう、あの時の自分はなりたかった自分ではなかった。望んだ世界に居なかった。それはこのままでは死んでしまうのではないかと思うぐらいにものすごく息苦しかった。
でもどうすればいいのか分からなかった。どんな風に動いたらいいのか、何をしたらいいのか・・・。自分の中には何も無い。そのこともよく分かっていた。でも何かしなければ!自分を生きるために!この世界に、自分と言う存在を残すために・・・!
まだ何も分からないけれど、とりあえずそこから抜け出した、つまり音大を辞めたのだ。だから今自分はここに居る・・・。
「春ちゃんここで降りるよ」
突然肩を叩かれて春香は我に返ると、広美が振り返って心配そうに自分を見ていた。
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