シーソーが揺れてる
「広美?」
不意に春香は広美を呼んでいた。
「ごめんね」
震える声で広美が言う。
「ちょっと、どうしたのよ急に・・・」
「春ちゃんが居なくなるの、やっぱり、寂しくて・・・」
「広美・・・」
心の囁きがつい声になって出た。
春香は手を延ばして広美の髪に触れた。泣いているせいか、それはほんのり湿っていた。
「今更何言ってるのよ。私が出て行けば、やっとこの部屋で松村くんと同棲生活ができるじゃない。彼と結婚したいんでしょ?」
じっとり濡れていく広美の髪を撫でながら、春香は冷静さを心がけて諭すように広美に言う。
「うーん、そうだけど・・・でも春ちゃんに会う無いのは嫌」
「私ならまだ当分はこの辺に居るつもりだから会おうと思えばいつでも会えるって」
「そうかもしれないけど・・・」
広美はさらに目を潤ませて大粒の涙を落とした。
「ごめんねえ。私、春ちゃんのためになれたのか、ぜんぜん自信無いけど・・・それでも、春ちゃんと一緒に生活できて、楽しかった。ありがとう」
「・・・」
気がつくと、春香は広美を強く抱きしめていた。
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