シーソーが揺れてる
春香も泣きたい気持ちでいっぱいだった。でも涙は落ちてこなかった。
そう言えば、これと似たようなこと、自分にもあったよなあ。あの時は広美が私を支えていたんだった。それでこんな風に電話がかかってきて・・・
ってこんな時間に誰だよ?もっもしかして、片山くん・・・?ポケットの中の携帯が電話を知らせる着信音を鳴らしていた。春香は泣きじゃくる広美からそっと体を離すと、携帯をさっと取り出して通話ボタンを押した。
「もしもし」
「あーもしもし、おれだよおれ」
受話器の向こうからいきなり直人の声が飛び込んできた。
「直人?どうしたのよこんな時間に。おれおれ詐欺でもするつもり?」
「そんなことするわけねえだろ?金無さそうなやつ・・・いや、何でもない」
「いいのよどうせ振り込めるほど多額の金持ってないから。それで、どうしたのよ」
「良太が部屋に居ないんだ」
「え?」
直人は話しをこう続けた。
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