シーソーが揺れてる
「こんなに広かったっけ?」
「それだけ春ちゃんの荷物がたくさんあったってことだよ」
「でもこれからは松村くんの荷物でいっぱいになるんだよ?よかったね」
春香は広美に向けてふふっと笑いかけた。
「そうだね」
「さてと、そろそろ行かなくちゃ」
「えっ、もう行っちゃうの?」
「うん。直人と会う約束してるから」
「あー・・・」
春香はソファーの上に置いてあるいつものバッグを肩に背負い込んだ。
「広美、今日までいろいろありがとう。お世話になりました」
そう言って広美に頭を下げた。そして振り返って玄関の方へと歩き出した。
「うん」
春香の後ろ姿に広美はゆっくりと頷いた。
「まっ、どうせ合唱サークルですぐ会えるんでしょうけど」
靴をはきながら春香は言う。
「そうだね。あっ、直人くんによろしくね」
満面の笑みを背に春香は居候先の広美の部屋から旅だって行った。
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