シーソーが揺れてる
「そうだったんですか?」
話を聞いた良太は驚きを隠せずにいた。
「そんなに、驚いた?」
「はい!僕も・・・」
「バイトなんか辞めて遊び歩きたいです」
直人は再び二人の会話を裂いた。
「違いますよ。こんなに明るく見える人がまさか・・・」
「仕事もしないで毎日・・・」
「いや、明るくないって」
心の中でそう呟く春香は直人をじっと睨んだ。
「僕もがんばらなくちゃ」
自分の話に強い感銘を受けている良太に、春香は自分に対して恥ずかしさのような物を覚えてしまった。
「すみません、失礼なこと言っちゃったみたいで」
「失礼だなんてぜんぜん」
「いいよなあ、ずーっと休みで」
「こいつのほうが失礼ですから」
直人の作業服の裾を摘みながら春香は良太に言った。そんな二人を見て、良太は微笑を浮かべていた。しかし二人はそんなことなど全く知らなかった。
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