シーソーが揺れてる
「あの、杉浦先輩にお会いしましたよねえ」
「うん、今日会ったよ」
「先輩、怒ってませんでした?」
「えっ?」
良太がそう尋ねる理由は何となく分かっているのだが、春香は一応聞いてみた。
「じつは昨日僕バイトを休んだんですが・・・」
「うん」
「そのことを先輩には伝えずに休んじゃったんですよ」
「うん」
「悪いことだとは分かっているんですが、先輩に理由を話すとまた冷やかされるんじゃないかって思うと・・・」
「なるほどねえ」
春香は再び迷った。昨日のあのことを聞いてみようか?でも、自分のしてしまったことを深く気にしている様子の良太に、果たしてストレートに直撃してしまうのも悪いような気もする。
「杉浦君、怒ってはなかったけど、片山君のこと心配してたよ。昨日も今日もバイト来てないからどうしたんだろうって」
少し口ごもった後春香は言った。
「やっぱそうですよね」
受話器の向こうで良太は深く大きなため息をついた、ような気がした。
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