夏休みの恋人
第一章 誰そ彼
◆◆◆
『あんた、誰?』
一度目は、病院の屋上。
橙色に染まる雲がかかった黄昏の空の下で。
大嫌いな煙草を片手に、あなたは無邪気に訊くものだから、大人の振りをしてシガーチョコレートを持った子供にしか見えなかった。
二度目は、病室のベッド。
窓から夕日の光が零れ広がった黄昏色のシーツの上で。
目覚めたあなたは一度目と同じ顔で無邪気に訊いてきて、ああ、あなたはあなたなんだと、思った。
ねぇ、慶。
あなたが記憶を失ったことを喜ぶ恋人は、あなたを愛していなかったのかな。
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『あんた、誰?』
一度目は、病院の屋上。
橙色に染まる雲がかかった黄昏の空の下で。
大嫌いな煙草を片手に、あなたは無邪気に訊くものだから、大人の振りをしてシガーチョコレートを持った子供にしか見えなかった。
二度目は、病室のベッド。
窓から夕日の光が零れ広がった黄昏色のシーツの上で。
目覚めたあなたは一度目と同じ顔で無邪気に訊いてきて、ああ、あなたはあなたなんだと、思った。
ねぇ、慶。
あなたが記憶を失ったことを喜ぶ恋人は、あなたを愛していなかったのかな。
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