夏休みの恋人
「ほんとっ、慶悪ふざけしすぎ!マジで心配したしー!」


明るい声で欝な空気を破ってくれたのは、麻紀だった。


「ちょっ、痛いって!麻紀おまえちょっとは手加減しろ!さっきのもすげー痛かったんだからな!デコぜってー赤くなってる」

「あちゃー、ホントだ。ごみんごみん」

「反省してねーだろてめぇ」


ふざけながら、俺も淳一も緊張を解いて内心ほっとした。



麻紀、サンキュー。



と心の中で呟いた。


「てか慶、ホント超久しぶりー。夏休み連絡一つもくれなくて、麻紀超さみしかったー」


麻紀は俺の女友達の一人だ。


「だからそれはこの前メールで説明しただろ。俺は夏休みの間記憶喪失だったの!」

「でもぉ、麻紀ずっと慶の電話待ってたんだよー?」


そう言って、俺の腕にしがみついてくる。



あの、麻紀さん、胸………あたってるんですけど。



わざとだな。



俺と麻紀は以前、友達以上の関係になったことがある。

でも、過去の話だ。



今はただの友達!



柔らかい胸の感触には気付かないふりをして、平然を装って言う。


「嘘つけ。麻紀だってオレに一回メールしただけのくせに。しかも三日前、思い出したように。どーせ夏休みに男できて、休み中ずっとイチャイチャしたものの、三日前別れてオレ思い出してメールした、ってとこだろ」

「………てへっ。その通りでござります。てか何でそんなわかんの!?慶ってエスパー!?」

「おまえがわかりやすすぎんだよ。あと今までの経験」

「何それ!まるで麻紀が同じこと繰り返してるみたいに」

「馬鹿の一つ覚えとも言うな」

「むっかー!」
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