夏休みの恋人
「なあ、ジミ子って誰?てか『納得』って?」

「あれ。慶、淳一から訊いてないの?」


『片想い』してる奴がいることは問い詰めたが、ほぼ訊いていないようなものなのでこくりと頷いた。


「あたしも5組の友達のミクから聞いたんだけどー……5組にジミ子ってのがいるのね。本名は知らないけど、皆そう呼んでんのー。あたしも見たことあるけど、眼鏡かけてお下げ髪で見た目本当地味だからー」



地味だからジミ子って。



ひねりも何もなく、まんまだな。



そう思ったが、あえて口を挾んで話を遮るようなことはしなかった。


「夏休み前までそんなんだったけど、新学期になってからびっくりするくらい可愛くなったってミクが言っててー。しかも男できてるって噂になっててー。あたしも半信半疑だったんだけど、今の見て。だから『納得』」

「……なるほど」

「あーでも本当びっくりしたー。あたしも一瞬ジミ子ってわからなかったもん。ジミ子ってあんなに可愛いかったんだー。……それとも淳一が可愛くしたとかーきゃっ♪」


一人で勝手に盛り上がる麻紀の言葉は適当に聞き流すことにした。



……しかし淳一にそんな彼女ができるとは。



今まで淳一が付き合ってきた彼女達とは全く違うタイプだ。



しかも淳一は相当入れ込んでいるようだ。



さらに興味が湧いた。



今日の放課後にでも、淳一本人に絶対吐かせてやる。



面白くなりそう♪



そう企みながら、もう二人がいないにも関わらずぼんやりと廊下を眺めていると、何を思ったのやら麻紀が一層体を押し付けてきた。
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