夏休みの恋人
「だーめっ。オレは麻紀とは友達でいることにしたの!」


麻紀は俺の言葉が予想外だったのか驚いたようにぱちぱちと瞬きし、しゅんと眉尻を下げた。


「……何か慶、変わったね」

「……え、何で?」

「だって今までの慶だったら即オッケーしてた。慶タラシだもん」



即オッケーでタラシって………



いやまあ否定はできませんが。



「なんか……ふっと何処かへ行っちゃいそうな感じ」

「………麻紀、」

「………な〜んてねっ♪」

「へっ!?」

さっきまでのおとなしい雰囲気はどこへやら、いつもの天真爛漫に戻った麻紀が意地悪気ににやっと笑った。


「慶の意地っ張り!後で麻紀ちゃんに泣き付いてきても知らないからねー!」


あっかんべー! と今時あまり見ないあかんべをして、麻紀はつむじ風の如く教室を飛び出していった。


呆気にとられ麻紀の出ていったドアを見ていたら、ポケットの中の携帯が震え、我に返った。
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