夏休みの恋人
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『オレは絶対にまた、こーこを見つける自信があるよ。だからこーこも、約束して』



三度目の出会いも、黄昏の光が照らしていた。



二度あることは三度あるって本当ね、と寝起きの頭でぼんやりと思った。



ぼんやりとしたまま、目の前にいるあなたを呼んだ。



だけど私を覗き込むあなたの瞳が、私の知っているあなたとは少し違って、前のあなたではないことを思い出した。



名を呼んでしまったことをどう言い訳しようかと、寝起きで働かない頭で悩んでいたら、あなたは私に訊ねてきた。



応えては駄目。



咄嗟にそう思ったのに。



なのに、思うよりも早く、名を告げてしまっていた。



だって、あなたがそんな顔をするから。



あの時と同じ、泣きそうな顔。



あの時のあなたとは、違うあなたの筈なのに。



『こーこ』。



音には出なかったけど、僅かに動かされたあなたの口唇が、自然にその名を紡いだように見えた。



『絶対にまた、こーこを見つける』。



あなたが言った言葉が、頭を過った。



それとも、私の希望なのだろうか。






ごめんね、慶。



あなたは私との約束を守ってくれたのに。



私はあなたとの約束を、守れない。



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