夏休みの恋人
「オレの輝かしい夏休みを返せ!!」

「まーだそんなこと言ってんのかよ慶(けい)。いい加減諦めろ。しつこい男はモテないぞ」


机に突っ伏し嘆く俺に、親友の淳一(じゅんいち)は冷たくあしらう。


「おまえのその台詞をこの二週間毎日毎日聞かされて、いい加減飽きたっつーの」

「毎日言っても足りないね!見ろ、淳一!」


言って、俺は片腕を広げ、教室の真ん中辺りを指した。

そこには、夏休みボケが抜け切らず、だらけきったクラスメイト達。

それだけでも許しがたいことだと言うのに、さらに俺の怒りを煽る光景が。


「なんだこのカップル率は!!」


教室にはこの夏休みでくっついたカップルがあちらにもこちらにも、夏休み前に比べ明らかに急増していた。


「もうオレ達は高校二年生だぞ!?青春時代真っ盛りだぞ!?来年は受験でそれどころじゃなくなるかもしれないから、この夏休みにかけてたのにー!」

「何を?」

「彼女だよ!」

「……おまえいっぱいいるじゃん」

「あれは女友達!この夏で一人だけの彼女作って、残りの高校生活の思い出を一緒に作りたかったの!」

「……おまえ意外とロマンチストだったんだな」

「うるさい。そういうおまえも彼女できたくせに」


淳一には今まで直接聞かなかったが、そろそろ教えてくれてもいいだろうと思って、ついに言ってやった。
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