逃げる女
『あ…その本、もうそんなに読んだんだ。どう?面白い?』



「うん。凄く!森田君はもう読んだんだよね?」



『ああ。それさラストで…』




「やだ!言わないでよ!」



『ぷっ…言わないよ。どんな反応するのか見たかっただけ。…嘉島ってそういう表情もするんだな。』




「え?」




『いつもさ、友達といても、どこか冷めてるっていうか…なんか、自分出さないで、相手に合わせてるっていうか…でもさ、今の嘉島の方が断然いいと思う!』



どきっとした。
いつも私は、友達に不快に思われたくなくて、周りに合わせて行動してた。だから言い当てられて驚いた。森田君が私を見てくれていたなんて、嬉しくて、恥ずかしくて…




『あっ。俺が勝手にそう思ってるだけだよ?気にしないで聞き流してくれればいいから。』



「…その通りかも…自己主張とか…苦手だし。反感かったらって思うと…」




『もっと早く話したりすれば良かったな。そしたらさ、嘉島の事いっぱい知れたのに。』



そうだ。森田君の事今更好きになったって、卒業したら別々になる。



もう会えない。



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