逃げる女
『嘉島?どうかした?』




「あ…こ、この本以外になにかお勧めの本とかある?」




『あるよ。今から借りに行く?』



借りに行きたいけれど、私と一緒にいたら、森田君が変に思われないだろうか。


それくらい、私と森田君は過ごす環境が違う。


いつも友達に囲まれてて輪の中心にいる、人気者の森田君。対して、大人しくて特定の人としか話した事のない私。



やっぱり…駄目だ。



「これ読み終わってから行くから、教えて?」



森田君に教えてもらった本の名前を書き留める。
皆、同じ作者の本ばかりだった。



『俺さ、その作家の本は全部読んでるんだ。知ってる?ドラマとかにもなってるんだぜ?』


「そうなんだ。」



『今新作も出たんだけどさ。図書館に入る頃には俺ら卒業してるよな。』



「自分では買わないの?」


『文庫になるまで待つ。ハードカバーだと高くてさ。』



「じゃあ、読めるのは大分先になっちゃうね。」



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