逃げる女
『4年に1回しか誕生日こないんだよな?』


『うるせーよ。』



『2月29日がない年は?どうしてた訳?』



『3月1日が第2の誕生日だよ。』


盛り上がる話を遠くから聞いてて、これだ!と思った。


2月29日、その日に森田君が欲しがっていた本を買って渡そう。


そうすれば、自然にプレゼント出来る。
きっと喜んでくれる。



私は頭の中で渡した時を想像し、喜ぶ森田君の顔まで思い描いていた。















『明後日、とうとう卒業式だな。』



「…うん。」



3月1日の卒業式を2日後に控えていた。
放課後の教室で森田君と話が出来るのも明日が最後。


『なんかさ、もうこうして学校に来なくなると思うと寂しく感じるよな。』



本当に寂しいと思った。森田君と話をするまでは、別に何とも思っていなかったのに。



『俺さ、明日誕生日なんだ。』



「さっき、聞こえてきてた。珍しいね2月29日なんて。」



『昔からよく馬鹿にされててさ、すげー嫌だった。』


「でも、森田君がいってたように、2つ誕生日があるなんて素敵じゃない?」



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