逃げる女
『見かけたから、電話より直接話した方がいいと思って…そんなビックリした?』



「う、うん。」



心臓がバクバクいってる。まだ会うかどうか迷っていたのに、本人目の前にすると更に断りずらいでしょうが!



『美紀ちゃん?』


そういって顔を近づけ覗き込む大志君。


私はつい後ろへ後ずさってしまう。


『ねえ。こんな所にいるって事は、待ち合わせ場所に向かってたって事だよね?良かった。会えないのかもしれないって思ったから。来てくれて嬉しい。』



にっこり笑ってそう言う大志君に私は白旗を上げた気分だった。


そんな上等の笑顔見せられたら、お断りなんて出来ないって!



「ち、ちょっと遅れそうだったの。それで…今日はどうするの?」



『お酒じゃ美紀ちゃんに敵わないから、俺の良い所見せられる場所に連れていってもいい?』


そういって私の手を簡単に取り、繋いで歩き出した。



いきなりかい!

手を繋ぐってこんなに簡単なもの?


やっぱり大志君…女の子の扱い慣れてるのかな…


繋いだ手をぼんやりと見つめながら、大志君に引かれて歩いていた。


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