逃げる女
『それ以来会うのは今日が初めてだった?』


「…昔の事なのに、馬鹿ですよね。あんなに動揺するなんて。」



自嘲気味に笑いながら杉田さんを見るけれど、杉田さんは悲しそうな顔で私を見ている。


哀れみ?
そんな目で見ないで。



顔を反らして、俯く。




『…俺の告白になかなか返事をしてくれないのはそれが原因なのか?』



「…すごく、勝手な事言うので先に謝ります。ごめんなさい…
私…杉田さんに告白されて、嬉しかった。今まで意識していなかったのに、好きだって言われてすごく気になるようになってきました。けれど、好きになるのが怖いんです。
好きになって、…また笑われたらって思うと、そこで気持ちにストップかけちゃうんです。」




痩せてから、杉田さん以外にも好意を寄せてくれる人は何人かいた。
お店に来たお客であったり、バイト仲間であったり、大学で知らない人にも声をかけられたりもした。


けれど臆病になってしまった私はどうしても先には進めず、皆お断りをしてしまっていた。



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