逃げる女
何て答えていいのかわからなくて黙っていると、杉田さんは、私の軽く頭を撫でてくれた。



『帰るか。』



「はい。」



立ち上がり、飲みかけのココアを片付けようと手に取る。


『水貼って置いといて。明日洗うから。』


「すぐ洗い終わりますから。」


『悪いな。車のエンジンかけてくる。』


立ち上がり、裏口へ歩き出す杉田さん。


洗い物を済ませて、手早く拭く。
元ある場所へカップを戻し終えても、杉田さんは戻って来ない。


車の雪下ろしでもしてるのかな。
裏口へ向かい、外の様子を伺おうとした。



『だから、いないって言ってるだろう。しつこいな。』


杉田さんの声だ。
でも…一体誰と話を?



もしかしたら電話中かと思い、聞いてちゃいけないとその場を離れた。





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