逃げる女
『コレ!!俺の連絡先。お願いだから、話を…』


森田君の体が後ろへと遠ざかる。尻餅をついた森田君。


『しつこいな。こいつ具合悪いって言っただろう。』

杉田さんが無理矢理車から森田君を引きはがしたんだ。


雪まみれの森田君がさらに雪まみれになっている。



閉まる助手席のドア。



『話…聞いてもらうまで、毎日でもここにくるから!嘉島っ…』



起き上がりながら叫ぶ森田君を置いて車は走り出す。



私は、サイドミラーに映る森田君から見えなくなるまで、目を離すことが出来なかった。









静かな車内。今日はラジオの音も聞こえない。









森田君に渡されたメモ用紙には、携帯番号が書かれていた。



渡された時触れた手は、凍るように冷たかった。
すごく真っ赤になっていた手。



一体いつからあの場所で私が出てくるのを待っていたんだろう。



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