逃げる女
「それはッ!!」


『いいんだ。言ったろ?待つって。駄目なら諦めるってさ。』


私の頭からコートを取る。乱れた髪を整える様に撫でてくれる優しい手。



『部屋まで歩けそうか?』


あまりにも心地よくて、杉田さんの手が離れても降りる事を忘れて座ったままだった。


「平気です。今日はありがとうございました。」


シートベルトを外してドアに手をかける。




体が後ろへ倒れた。後ろから抱きしめられていた。







そのまま動けない。






『…雪祭り。一緒に行けるの待ってるから。』



そういって私の背中を押し、降りるように促される。


「お、おやすみなさい!」


振り返る事が出来ずにそのまま車を降りて部屋まで走った。





.
< 125 / 197 >

この作品をシェア

pagetop