逃げる女
『そうなんだけど、途中で引き返したりされるかもって思ったら、入れなくて…』



「―ッ。とにかく中に入ろう。風邪引いちゃう。」




1番奥の席に座る。

「コート濡れてるから脱いだ方がいいよ。」



『や。もう少し暖まってからにする。』



向かいに座った森田君はガチガチ震えてて胸が痛くなった。



しばらくして注文してたコーヒーが運ばれてくる。


森田君は、手を温めるようにカップを両手で持ち、震える手で口元に持っていった。


『熱っ!!』



「大丈夫!?」


『平気…』




話をしに来たのに、こんな会話しか出来ない。


私から聞くべき?それとも話始めるのを待ってる?



無言がやけに気になって、何をしていいのかわからず、普段は入れないミルクまでコーヒーの中に入れ、スプーンでくるくる掻き回す。



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