逃げる女
「一緒になって笑ってたんだと思ってた…」



『そんな事ない!…嘉島。』



下げてた頭をあげた森田君は私の顔を見て言葉をきった。



「あ…やだ…―ッ」




涙が止まらない。



あの時の事なんて、私以外誰も覚えていないと思ってた。だから…



森田君の辛そうな顔が涙で歪む。






「私の方こそ…ずっと森田君の事誤解してたっ!ごめ…なさッ…」



みんなと一緒に私を蔑んでたと思ってた。そんな事ももう忘れて、森田君は自分の生活を楽しんでると思ってた。


苦しんでるのは私だけだと思っていたの。


こんなにも森田君も苦しんでいたなんて、知らなかったの…




『いいんだ。そう思われて当然だと思ってたから。だから…謝らなくていい。…今まで辛い思いさせて…ごめん。』




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