逃げる女
『泣くなよ。…美里さ、本当に武志の事好きだった?』



「…何よ。じゃなくちゃ付き合わないでしょ!」



『武志も言ってたよ。“美里の気持ちが見えない”って。俺もそう感じてたし。付き合ってからも武志への接し方が全然変わらなかったじゃんか。』



「そんな事…ない…」



『いや、あったね。お前いつも友達優先するわ、俺とも普通に2人で遊ぼうとするわ、俺が武志に気使って断り続けてたの知らねーだろ?』



「うそ…そうだったの?」


確かに…でもそれは、武志と2人きりになるのが照れ臭くて、周りに冷やかされるのも嫌だったからで…



『振られても文句は言える立場じゃねえな。』


そういって、私の持っていた缶ビールを奪いとり、飲み干す充。



「何よぉ…あんた何しに家に来たの?慰めてくれるんじゃなかったの?」



ポロポロと涙が零れてきて止まらない。


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