逃げる女
わざとではないと思うんだけど、腰に手がかかった瞬間、耐え切れなくなった私は振り払おうと動いた。


『う゛っ!?…』


キューを持ったままだったから、先が見事に大志君のボディにヒット。
うずくまる大志君。



「ご、ごめんっ!!大丈夫?」



大丈夫じゃなさそうなのは見ればわかるんだけど、そう聞かずにはいられない。



『平…気…』



お腹を押さえながら立ち上がる大志君。



「本当にごめんね。ちょっと…恥ずかしくて…その…」



とにかく、離れられた。


心臓に手を置いて呼吸を整える。
近距離はヤバすぎる。
一定距離を保たないと。


「お詫びに何か飲み物買ってくる!お茶でいい?」


そういって私は鞄を持ち、カウンターへと向かった。



「すみません。烏龍茶とかあります!?」



大志君の知り合いと思われる人に声をかけてみた。



『はいよ。』



渡された2つのグラス。
お金を渡そうとすると、


『お金はいいよ。大志に請求するから。』



「私が奢りたいから、貰ってくれないと困るの。」


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