逃げる女
『泉美、すげー気にしてたぞ。バイト休めないから様子見て来て欲しいって頼まれた。』


「…そっか。」


泉美に“心配しなくても平気だよ”ってメールくらいちゃんと返してあげれば良かったな。
悪い事したと反省する。




『…武志と何があった?』


「何もないよ…あるわけないじゃん。」


笑って言ったつもりだったのに、渇いた笑いしか出てこなかった。


急に立ち上がる充にビクッとしてしまう。


暗闇に目が慣れてきたんだろう。そんな行動の私を見て一言



『電気つけるぞ。』


なんだ。電気か…


って!!今付けられたら困るよ!!


「駄目っ!付けないで!!」


今明るい所で顔合わせたら、冷静になんて話せない。


動揺してしまう。私の気持ちを知られてしまうかもしれない。


『は?でも…暗いだろ?』


暗い方がまだまともに話せるもん。…だから…



「お願い…つけないでよぉ…」

最後の語尾が震えてしまった。

もう電気のスイッチに手をかけている充を見て、泣きそうになってきちゃう。
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