逃げる女
『いつもより女らしい。』

「…そういう時もあるんだよ?知らなかったでしょ。」


そして私も充の背中に手を回す。



今までは充の事好きだなんて気付いてなかったから、意識しないで済んだんだよ。


だから、ノーブラ姿で部屋にだって招き入れたりもした。


以前、私が精神的に弱っていた時だって、こんな風に甘えた事なんてなかったんだ。


女らしい一面なんて今まで見せた事がない。充がそう思うのも無理はないよね。

『調子狂うだろうが。』


突然私を引きはがした充。


『やっぱり、これは駄目だ。』


「え?」



『こういうのは、友達同士がする事じゃねえよ。』




友達同士



充の言葉に心臓が収縮した気がする。


熱を持った頬も、サーっと冷えていく感じがする。
指先も冷たくなっていくのがわかる。


わかっていたはずだよ?


充にとって私は友達なんだって。


それなのに、直接充に…
充の声で事実を言われるのがこんなにキツイものだったなんて。


どこかで期待していた自分の甘さに腹がたった。
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