逃げる女
「そ、そうだよね!ごめんね!確かに私らしくなかったね。ははは…」




『美里、俺達さ…「ごめん…今日はもう帰って?明日はちゃんと大学にも行くし、もう…大丈夫だから。」


充の言葉を遮ってしまう。


暗闇でもわかってしまう充の表情。
充もきっと私がどんな顔してるのか見えているんだろう。



笑え。




笑って見せなくちゃ。




私の気持ちは充にとっては困るものなんだから…


そうでもしなくちゃ、充の側にはもういられない。




「泉美も…充も…こんなに心配してくれるなんて。私、いい友達に恵まれたね!」



自分で友達って言っただけでも、胸がズキンと痛い。

けれど、それを悟られちゃいけないんだと、必死に笑って見せる。


少しくらい引き攣っても、暗闇が隠してくれるよね?


「わ、私お風呂入りたいから、充はもう帰って?今度、ちゃんとお礼するからね!」



充の後ろに周り背中を押して玄関の方へと追いやる。


靴を履いた充は部屋を出る前に、一度振り返り私を見た。



何か言いたそうな顔してたけど、結局


『また明日な。』


それだけ言って帰ってしまった。
< 174 / 197 >

この作品をシェア

pagetop