逃げる女
『俺、昨日その子に告った。昨日から付き合う事になったんだ。だからもう気にするな。』



「…ありがとう。」



気にするな なんて言ってくれてありがとう。


『美里も充とうまくいくといいな。』



「私は…私達は…無理だよ。」



『どうして?』



「充はさ…私の事何とも思ってないんだよ。」



だからうまくいくとかは、ないんだ。




『充に聞いたのかよ!?充の気持ち、聞いたことあるのかよ!』



少しだけ声を荒げる武志に驚きながらも私は答えた。



「私は友達だって、言われたから…」



友達だから…あんな関係になって充は動揺した。



そうでしょ?



「だから…武志が充を出し抜くなんて考えも、勘違いだよ。」


笑ったつもりが、気付けば涙が出てきた。


昨日あんなに泣いたのに、目の奥がズキって痛むのに、溢れる涙。涙は枯れる事ってないんだね。
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