逃げる女
棒立ちになって立ちつくす私に気付いたのは女の子だった。



私だと認識したのか、するどい目付きで睨まれる。



そして、履いているミュールをカツカツと響かせて私の元へやってくる。



それをただ見ているだけの私と充。



私の前までやってきた女の子はおもむろに片手を振り上げた。


それを目の端で確認していたのに動けない私。


だって、離れた所にいる充が、すごい勢いで駆け寄ってくるのを見ていたから。


そっちに気を取られていたから…



パーン



渇いた音がしたのと同時に頬に鋭い痛みが走る。


頭がガンガンと痛みだす。


ああ、私殴られたんだと、思った。
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