逃げる女

素直な気持ち

頭がガンガンする。それに肩も痛い。


殴られたのは頬なのに。



ガンガンする痛みに耐えられなくて、顔をしかめる。


『美里ッ!?』



充の声がする。



目を開けると覗き込む充の姿。泉美まで隣にいる。



『気がついたっ!!私、先生呼んでくる!!』



先生?って何だ?



少しずつ、思い出してきた。頭と肩が痛かったのは、ぶつけたからだ。



そうだ…私…逃げて…転んで…それから…



充の顔の上に見える天井。


外にいたはずなのに…



「…ここはどこ?」



『病院!お前…俺が誰かわかるか!?』



「わかるわよ。充でしょ?…痛ッ…大声出さないで…頭に響く…」



『よかった…』


そう言って私の手を両手でとりおでこにつける充。



横になったままその様子を伺う。



「私…どうして…」



『段差のあるところでよろけて頭から落ちたんだよ…いくら呼んでも目を醒まさないし…』



ああ…それで病院に担ぎこまれたんだ…



『…このまま…目を醒まさなかったらどうしようかと…ッ…』



ぎゅっと私の手を握る充。
< 187 / 197 >

この作品をシェア

pagetop