逃げる女
私は気を取り直して大志君に聞きたかった事を聞いてみた。



「ねぇ。なんでカラオケBOXなわけ?普通はどこか喫茶店とかじゃない?」




そう。


カラオケBOXで2人きりを避けたくて、提案したのになぜ私達はここにいるの?


『だって、ここの方が誰にも邪魔されずに2人きりで話せるでしょ?カラオケBOXに来たからって歌わなくちゃいけないわけじゃないんだし。』



クラっとした。
大志君の笑顔に、そしてここへ来た理由に。



甘かった。


私の考えが甘すぎた。



カラオケBOXへ来て歌わないなんて。


話をするためにくるなんて。


いや、だって普通は歌うでしょ!?



大志君がカラオケ行こうかと提案したのは、こうして話すためだったんだ。


それを私は勘違いして何処かお喋り出来る所なんて言ってしまった。


こんな事になるなら、初めから目的に気付かないままカラオケBOXへ来て、とっとと曲入れて歌いまくれば良かった。


後悔しても、もう遅い。


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