逃げる女
私は迷った揚げ句、電話をかけた。



『もしもし?まだ起きてた?』


「うん。どうしたの?さっき会ったばかりなのに。」


『寝る前にもう1回声聞きたくなって。』


平気で恥ずかしいこと言わないでよ。


「そ、そう。」


『明日も会える?』


「明日は、ずっと講義あるから…。」


『その後は?夜ご飯とか行かない?』


「……用事あるから無理なの。ごめんね。」


『そっか。残念。また誘ってもいい?』


「もちろん。じゃあ…そろそろ寝るから。おやすみ」




電話を切って、一気に力が抜けた。


用事があるなんて嘘なんだ。


ただ会うのが怖くなっただけ。


大志君が直接好きとか言ってくれなくても、私に好意があるだろう事は今の電話でよくわかった。


本来ならすごく嬉しい事なのに、喜べないのは大志君の友達が話してたあの言葉

“飽きたらすぐ別れる”
“長続きした試しがない”



.
< 32 / 197 >

この作品をシェア

pagetop