逃げる女
次の日。大志君に声をかけられたのは、綾と2人で大学内の食堂でお昼を食べに向かう最中だった。


『遠くから見かけたから、声かけたくて追い掛けてきたんだ。』


そんな大志君を目の当たりにした綾は、私を肘でつつきながら耳元で


『後でゆっくり聞かせてもらうからね。』


そう言い残してさっさと食堂へ一人で行ってしまう。

私は追い掛けるべきか、大志君と話をするべきか迷って、2人を交互に見ていた。



『友達、よかったの?』



「お昼一緒に食べるつもりだったんだけど…先に行って席取ってくれてるのかな?」



『あのさ、美紀ちゃんに伝えたい事あるんだ。』


「なに?」


綾の事を気にしつつも、大志君の話に耳を傾ける。


『昨日の事なんだけど…『大志っ!!勝手に居なくなってどうしたんだよ!?』


突然誰かに遮られた大志君の言葉。


駆け寄って来た1人の男の人。あ…この人…昨日大志君と私の事で話してた大志君の友達だ。



『…あれ?美紀ちゃんだっけ?ごめん。大志の陰になってて見えてなかった。』

「…こんにちわ。」


.
< 34 / 197 >

この作品をシェア

pagetop