逃げる女

本当の君。それでも大好きだからね。

『美紀ちゃん!』


考え込んでた私を呼ぶ大きな声につい体がびくついた。


「あ…早かったね?」


『家近くだから。…隣座ってもいい?』


「うん。」


隣に座る大志君は、こないだとは違ってベンチの端へと座る。人がもうひとり座れるくらいの間が空いていた。


「大志君、そんな端だと落ちちゃわない?」



『大丈夫。美紀ちゃんの話って…何?』


下を向いたまま聞いて来る大志君。


「えっとね?少し長くなるかもしれないけど、聞いててね。私ね、大志君とこないだ2人で遊びに行く前にね、薫…君達の話を偶然立ち聞きしちゃったんだ。」


『薫達?薫と知り合いだったの?』


「その時は知り合いじゃなかったよ。それは置いておいて。その話っていうのが……大志君と私の事で…」


『?』


「その…大志君が…前の彼女と別れたばかりなのにもう私と良い感じになってるって。それで、どうせすぐに飽きて別れるんだろうなって…。大志君て今まで彼女との付き合いとか長続きした事ないんだって?そんな話をね、聞いちゃったの」


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