逃げる女
風で舞う雪から少しでも身をひそめたくて、マフラーを上まで上げて口元を隠す。



早く3月になればいいのに。そうすれば寒さも和らぐし、何より2月が苦痛で仕方がない。


1番寒くて、そして私の嫌いになった月。2月。




開店30分前のお店に着いた。コートの雪をはらって落し、裏口から中へ入る。

「お早うございまーす。」

『お早う朋美。鼻、赤くなってるぞ。』


仕込みをしながら言う店長。


『ホントだ。嘉島さんの鼻トナカイみたいっすよ。』


バイト仲間で後輩の岡島君は指差して笑う。


「しょうがないでしょ?寒かったんだから!」



『朋美、今日の夜空いてるか?』


「空いてますけど、まさか?」


『そのまさか。夜の部の高橋がインフルエンザで来れないんだ。頼む。ラストまで通しで、出てくれるか?』



『…賄いご飯フンパツして下さいね。』




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