逃げる女
気付けば店長の次に長くいるのが私だった。
夜の部に来る社員の杉田さんよりも古い。


『しかし、この4年で朋美も変わったもんだ。昔は…』


「店長?それは禁句だって言ったはずですよ?それ以上言うつもりなら、夜まででないで、帰っちゃいますからね。」


飲み終えたコーヒーカップを洗いながら軽く睨みつける。
店長は肩を竦めて、その場から居なくなった。



『変わったって?嘉島さんが?昔はどんなだったんすか?』


「教えてあげない。さぁ、お店開けよっか。」


私もホールへ向かい、話を終わらせる。


レジのお金を入れていた店長は私に気付くと片手を顔の前に出して、ごめんのポーズをとった。


それを見て私は笑って返す。気にしてませんよ。という意味をこめて。




今日は雪がすごいから、お店も暇かもな…



窓の外のふぶいてる風景を眺めながらそう思った。



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