逃げる女
歩いて20分の距離も車だと、5分ちょいで着いてしまう。


家の前に止まったのを確認してから、私はシートベルトを外して杉田さんにお礼を言った。


「ありがとうございました。」


『嘉島、こないだの話なんだけど…』


私はドキッとした。


杉田さんに送ってもらうのが、気楽ではなくなってしまった理由。




「ごめんなさい。もう少し考えさせて下さい…。」


『悪い。急かす事言って…。』


違う。悪いのは私だ。
もうどれだけ待たせているのだろうか。


『急かした後でこんな事言うのも説得力ないかもしれないけど…ゆっくり考えて欲しい。』



「…はい。」



『俺嘉島の事、本気で好きだから。』



私が何も言えずにいると、杉田さんは軽く私の頭をポンポンと撫でて、

『お疲れさん。』


と、一言だけ言った。



「お疲れ様でした。」



私は軽く一礼して車を降りた。



.
< 80 / 197 >

この作品をシェア

pagetop